うつりというもの
「実は、信じてもらえるかどうかなんだけど…」

「うんうん」

三田村の扱い方を理解した遥香は手を握ったまま促した。

「遺体が見つかった時なんだけど」

「うんうん」

「君のお母さんの頭部は頭蓋骨じゃなかったんだ」

「……は?」

遥香は言われた事の意味が分からず目を点にした。

「あの似顔絵の顔をしていたんだ。そして、下の身体と普通にくっ付いていて、まるで生きているみたいだったんだ」

「……」

さすがに、遥香の手が緩んだ。

「えっと、全然意味が分からないんですけど…」

「だから!普通に髪の毛も皮膚もあって、俺も赤井さんももう一人の警官も、君のお母さんの生前の顔を見たんだ!おっと…」

上手く説明出来ずについ声が大きくなった三田村が口を押さえてドアの方を見た。

遥香も、その視線につられるようにそっちを見たが、頭の中はそんなことはどうでもよかった。

「複顔なんてやってないんだ。もしやったとして、いくらCG使っても、発見から数日で出来る訳がないんだ。俺達が実際に見たからあの似顔絵が描けたんだよ」

「ちょっと待って。じゃあ、何で私が見たのは頭蓋骨だったの?」

「ここからだよ。きっと信じられないだろうけど…」

三田村は一呼吸を置いた。
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