うつりというもの
教授達は、冬子にお礼を言うと、車の方へ向かった。
遥香は門を出ると見回してみたが、女の子はどこにもいなかった。
車に乗ってからも特に見えることはなかった。
ずっと付いてくるのに、特に何かを話そうとしない女の子の霊。
別に遥香自身に憑いたという感じでもなく、付いてくるその理由が分からず、遥香は内心首を傾げていた。
森下は、もう一ヶ所を案内してくれたが、そちらは木製のうつり除けだった。
そこでも、高齢な奥様にいろいろ聞いてみたが、梅木家で聞けた以上のことは聞けなかった。
教授達はその奥様にお礼を言った。
「こうしてわざわざ調べにくるくらい、うつり除けって、やっぱり珍しいんですかね?まあ、確かに残っているのは今はこの町くらいですけどねぇ」
「え?どういうことですか?」
教授が聞き返した。
「あら、ほんとに昔は、この辺の町はどこもあったはずなんですけどね」
教授が森下を見たが、
「え?そうなんですか?私はこの町の伝統的な建築様式かと思ってました」
「あら、私が子供の頃はまだあちこちあったのよ。まあ、弘前市まで行くと無いかもしれないけど」
「そうなんですか。すみません、勉強不足で」
森下が教授達に謝った。
「いや、気にしないでくれ」
教授は手を軽く振った。
「それならそれで、一つ頼んでもいいかな?」
「あ、はい。何でしょう」
「その、この辺の町とやらでのうつり除けについての資料がないか各教育委員会とか聞ける所に聞いてもらってもいいかな?私達はこの後郷土資料館とか回って、そのまま東北を調べて回るので、ゆっくりで構わないから」
「はい。それくらいなら」
森下はにっこりと笑った。
教授達は再度奥様にお礼を言うと、森下を役場まで送って、次の目的地に向かった。