うつりというもの
「お寺が管理して鍵を?」
「はい」
「その塚には一体何があるんですか?」
「いやぁ、それが全然わからないんですよ」
橋本の言葉に教授達は顔を見合わせた。
「ただ、昔から皆怖がって、誰も近づかない場所とだけは言えます」
「そういえば、先生、そもそも『塚』ってどんな意味合いなんですか?」
忍が教授を見た。
「まあ、いろいろあるんだ。墓的なものもあるし、ただ地面が盛り上がっている所を目印的に呼んだり、何かを祈念したものだったり、古えの神道ではあの世との境界としたり、後は、非業の死を遂げた者が悪神とか悪霊にならない様に祀ったものとかな」
「最後の2つが気になりますね。うつり除けと合わせて考えるとさらに…」と、忍が言った。
教授も頷いた。
「昔…まあ、戦国時代以降くらいでこの辺で何か合戦とかあったんですか?」
教授は橋本を見た。
「そうですねぇ…。特に大きな合戦は無かったかと思いますが、この辺の地侍同士での小競り合いはあったでしょうね。ねえ、大石さん、何か知ってる?」
橋本は、後ろに座る彼と同世代の女性職員に声を掛けた。
「私も特に聞いたことないですね。その辺の遺構、遺物は言うほど発掘されていませんし」
「そうだよね…、すみません」
橋本は頭を下げた。
「いやいや」
教授は軽く手を振った。
「この辺でそれなりに合戦とか戦があったとすれば、首塚の可能性もあるなと思ったのでね」
「ああ、まあ、そんなものだと思います。実際、首だけの霊を見たとよく言われる場所なので」
「あ、そうなんですか」
首塚とは、戦などによって討ち取られた者の首が葬られるもので、戦国時代などでは全国各地に多数見られた。
「逆に、首塚はどこかに残っているんですか?」
遥香が橋本と大石と呼ばれた女性を見た。
「横手市には首塚神社があるけど、あれは坂上田村麻呂まで遡るものだし…戦国時代くらいからのはないかな?」
「そういえば、ないね?」
「ないわね」
二人は顔を見合わせて言った。
そして、教授と遥香も違う意味で顔を見合わせた。
そのうつり塚が、この地域で唯一の首塚である可能性があるのだ。
「とりあえず、現地を案内してもらってもいいですか?」
「あ、はい。わかりました」
「はい」
「その塚には一体何があるんですか?」
「いやぁ、それが全然わからないんですよ」
橋本の言葉に教授達は顔を見合わせた。
「ただ、昔から皆怖がって、誰も近づかない場所とだけは言えます」
「そういえば、先生、そもそも『塚』ってどんな意味合いなんですか?」
忍が教授を見た。
「まあ、いろいろあるんだ。墓的なものもあるし、ただ地面が盛り上がっている所を目印的に呼んだり、何かを祈念したものだったり、古えの神道ではあの世との境界としたり、後は、非業の死を遂げた者が悪神とか悪霊にならない様に祀ったものとかな」
「最後の2つが気になりますね。うつり除けと合わせて考えるとさらに…」と、忍が言った。
教授も頷いた。
「昔…まあ、戦国時代以降くらいでこの辺で何か合戦とかあったんですか?」
教授は橋本を見た。
「そうですねぇ…。特に大きな合戦は無かったかと思いますが、この辺の地侍同士での小競り合いはあったでしょうね。ねえ、大石さん、何か知ってる?」
橋本は、後ろに座る彼と同世代の女性職員に声を掛けた。
「私も特に聞いたことないですね。その辺の遺構、遺物は言うほど発掘されていませんし」
「そうだよね…、すみません」
橋本は頭を下げた。
「いやいや」
教授は軽く手を振った。
「この辺でそれなりに合戦とか戦があったとすれば、首塚の可能性もあるなと思ったのでね」
「ああ、まあ、そんなものだと思います。実際、首だけの霊を見たとよく言われる場所なので」
「あ、そうなんですか」
首塚とは、戦などによって討ち取られた者の首が葬られるもので、戦国時代などでは全国各地に多数見られた。
「逆に、首塚はどこかに残っているんですか?」
遥香が橋本と大石と呼ばれた女性を見た。
「横手市には首塚神社があるけど、あれは坂上田村麻呂まで遡るものだし…戦国時代くらいからのはないかな?」
「そういえば、ないね?」
「ないわね」
二人は顔を見合わせて言った。
そして、教授と遥香も違う意味で顔を見合わせた。
そのうつり塚が、この地域で唯一の首塚である可能性があるのだ。
「とりあえず、現地を案内してもらってもいいですか?」
「あ、はい。わかりました」