うつりというもの
橋本を助手席に乗せて、5人は忍が運転する車でうつり塚のある山の方へ向かった。

藤実町は山の麓にある感じで、町外れはそのまますぐに峠道みたいになった。

その峠道も2車線が1車線になってきた。

「あの辺ですよ。お寺があったのは」

橋本が右前方の林を指差した。

荒れてはいるが、確かに、以前は何かがあった様な平たい二段の林だった。

「管理していた以上、うつり塚に関する書物や資料があったんでしょうけどね」

橋本が呟いた。

それからも15分くらい走って、ほぼ行き止まりみたいになったところが少し空き地になっていた。

「ここからは徒歩です」

「あとどれくらいですか?」

遥香が聞いた。

「そうですね、30分くらいですかね」

「え?そんなに?」

遥香達は顔を見合わせた。

「管理していた寺からもかなり離れているんですね?」

教授が来た道を見ながら言った。

「ええ、まあ」

あまり人里近くに置きたくなかったということか…

教授はそう思った。


「あ、とりあえず、いるかもしれないので。これ懐中電灯を皆さんの分です」

橋本がトランクルームに積んだコンテナボックスから、各人に手渡した。

「さあ、行きましょうか」

先に歩き出した橋本に皆は付いて行った。
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