うつりというもの
その洞穴の入り口は高さが2m、幅も同じくらいだった。

入り口には鉄の格子状の柵が、上から地面までぴったりとはめられていた。

「これ、うつり除けに似てますね」

「そうだな」

教授は普通に言った。

そして、さらにその奥に木の格子状の柵がはめられているのが見えた。

「ここまでするってのは、それだけ封印…とかの意味ですかね?」

「そうだな…」

教授は少し怯えたような声になった。

真ん中に扉があるが、もちろん鍵が掛かっていた。

「古いが頑丈そうな鍵だな」

教授がその鍵をガチャガチャとさせた。

「あ…」

忍がその声に教授を見ると、教授の手に壊れて外れた鍵があった。

「壊しちゃだめじゃないですか」

「いや、壊れていたんだ」

「いや、壊したでしょ?」

「だから、壊れていたと言っているだろう!」

珍しく動揺した教授が声を荒げた。

「どうかしましたか~?」

橋本が口元に両手を当てて叫んだ。

「教授が鍵を壊しました~!」

忍が同じように叫んだ。

「違う~!壊れていたんだ~!!」

教授も同じく叫んだ。

「ええ~!?そりゃまずい。ちょっと行ってきますね」

橋本は遥香と季世恵を見ると駆けて行った。
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