うつりというもの
究極の選択に、みんなといることを選んだ季世恵も含めて、全員で懐中電灯を持って中に入った。

先頭は教授と遥香、その次に忍と季世恵、そして一番後ろを橋本が歩いた。

鉄の格子柵もそれなりに古かったが、木の格子柵はさらに古い感じだった。

「多分、この木の柵の方が先にあったんだろうな。その後、あの鉄の柵がさらに外側に付けられたと思う」

教授が木の格子柵を調べながら言った。

さらに、「この少し新しい足跡は、一人だな」と、地面を照らしながら言った。

「前に鍵を壊して入った奴ですか?」

「ああ」

「一人でこんなとこに?信じられない!!」

季世恵さんが少し壊れた。

「何のために入ったんでしょうか?」

遥香が季世恵に苦笑しながら言った。

「それは塚まで行ってみないとわからんな」

「まあ、そうですよね」

教授が冷んやりとした暗闇の中を先に進み始めたので、遥香達も付いて行った。


真っ暗な中で、5本の光条がその暗闇を無くそうと交錯していた。

何か恐ろしいものがその光の中に照らし出されたらと、誰もが怯えながらではあった。

でも、その光の中に照らし出されるのは、洞穴の少し濡れた様な岩肌だけで、特に人の手が加えられたものはなかった。
< 80 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop