うつりというもの
「れ、霊が、溢れている?ひ、ひぃー…」

季世恵さんが気を失って倒れかけたのを忍が支えた。

「首塚は首塚として、これだと普通の首塚だ。特にうつりとの関係は分からないな…。…ん?」

教授が首を傾げた。

「先生、どうかしました?」

「いや、遥香君。君はさっきまであんなだったのに、どうして、急に霊を感じるのが大丈夫になったんだ?」

遥香はしまったと思ったが、季世恵が気を失っているので、いいかと思った。

「実は、さっきから女の子の霊がここにいまして、その子が低俗霊を追い払ってくれたみたいで…」

「え!」

「え!!」

「ええー!!!」

と、教授と忍と橋本が驚いた。

「ど、どこに?」

さすがに教授も声を少し震わした。

「その塚の向こう側です」

女の子は、普通の表情で特に反応はなかった。

「どんな子なんだ?」

「えっと、4、5才で、真っ直ぐな長い黒髪に白い服を着てて、黒い靴を履いてます」

「写真撮っても大丈夫かな?」

「う~ん、どうだろ?」

遥香は「ねえ、写真撮ってもいい?」と聞いてみた。

女の子は首を傾げた。

「よくわからないみたい」

遥香は忍を見た。

「でも、撮りたいな。教授、季世恵さんをいいですか?」

「ああ」

教授に季世恵を任せると、忍は塚をファインダーに入れてシャッターを切った。

フラッシュで光ったその瞬間だった。
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