うつりというもの
甲高い悲鳴の様なモノが全員の頭の中に響いた。

「うわっ!」

「いやっ、なにこれ…」

遥香も耳を押さえた。

そして、地面の下から嫌な感じが湧き上がってくるのを感じた。

女の子の方を見ると、塚の方をじっと見ていたが、

「早くここを出て」

そう言って、出口の方を指差した。

私が戸惑っていると、

「早く」

静かに、だけど強く、そう言った。

「みんな!すぐにここを出て!」

遥香は叫んだ。

そして、季世恵さんを忍に背負わせて、みんなで洞穴を走って出ようとしたら地面が大きく揺れ始めた。

何とか外に出て、少し離れた所まで行って後ろを振り返ると、女の子が洞穴の方に向かって手を伸ばしていた。

そして、止めの様な大きな揺れが来た。

「うわっ!」

みんながよろけて転けた時、洞穴が崩れていった。

しばらくその揺れが続いて、収まる頃には、完全に洞穴は塞がれていたのだった。

「な、何だ?何が起こった?」

教授がそう言って遥香を見た。

「あの女の子が『出ろ』って言ったんです。そうしたら…」

遥香は、呆然としながら言った。

「女の子は?」

遥香はもう一度洞穴の方を見たが、さっきの場所に女の子はいなかった。

周りを見回してみたが、どこにもいなかった。

「いなくなりました…」

遥香は戸惑った様に言った。


女の子はいなくなったが、遥香にあの感じはきていなかった。

多分、霊達はあの子に抑えられたまま、埋まったということだろう。

ただ、あの揺れ…

遥香にはあの女の子が起こした様な気がした。

「これじゃ、どうしようもない……とりあえず、役場に戻るか」

教授が言った。

「はい…」

橋本もそう答えるしかなかった。
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