うつりというもの
お礼を言って役場を出ると、忍と季世恵が車に乗ったところで、遥香が教授を引き止めた。

「どうした?」

「さっきの事なんですけど」

「ん?」

「あの地揺れ、あの子が起こした気がするんです」

「そうなのか?」

「実は、私、あの子が見えるけど、あの子がいる時に例の感覚がこないんですよ」

「霊として感じてないってことか?」

「はい」

「そして、あれだけの地揺れを起こす力…」

教授も、遥香と同じ事を感じた様だった。

「私達に付いてきていますけど、悪意は感じないし、逆に守ってくれた?みたいだし」

「確かに…」

「このままでいいですか?」

「いいんじゃないか?俺達には自分達を守る術がない。逆にそっちの方が助かるよ」

「そうですね」

遥香は頷いた。

「どうかしたんですか?」

忍が窓から顔を出した。

「いや、何でもない。行こうか」

遥香と教授もそれぞれ車に乗り込むと、岩手に向かって出発した。
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