甘え下手の『・・・』
『流される気になってきたか?』

そう耳元で聞かれ真っ赤になりながら筧くんを見上げたら

「筧主任!」

『こんなところにいたんですかぁ?』といいながらコツコツとパンプスの音を響かせ小走りに近づいてくる女性。

それに気づいた私が筧くんから一歩離れると、筧くんは小さくため息をつき、

「今井、何の用だ」

低く冷たい声。いつもぶっきらぼうな話し方をする筧くんだけど、こんな冷たい声は初めて聞いたかもしれない。

「課長が筧主任に用事があるようだったんでぇ、私が探しにいってきまーす、って言って、私探しに来たんですぅ」

『今井』さんはそんな筧くんの態度に気がつかないのか甘えた声を出す。

「津田に頼まれていた仕事は終わったのか?」

「まだですよぉ?でも課長がぁ…「もういい」」

なんだ?この子は。
頼まれた仕事をせずに筧くんを探しにきた?それこそ頼まれていないのに?

驚きすぎて言葉の出ない私と、呆れて言葉の出ない筧くん。




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