甘え下手の『・・・』
楽しかった。本当に楽しかった。
筧くんとの会話は思った以上に弾んで。やっぱり営業部の筧くんは話も上手だし聞き方も上手で。エースと言われてる理由がよくわかった気がする。

時々会話が途切れて無言になる時間もあったのだけれど、無理に会話を探すわけでなく、その無言の時間も楽しかった。

この人と一緒にいるのはとても居心地が良い。そう感じられる時間だった。

「…そろそろ行くか」

時計を見ればもういい時間だ。

会計をお願いしレジへと向かうと筧くんが先に財布を出している

「筧くん、今日は私がって言ったでしょ?お礼なんだから」

慌てて前に出て財布をだそうとすると、

「相沢はこんだけちょうだい」

と私の財布から2枚引き出す。

「焼き鳥代。ごちそうさま」

それじゃお礼にならない、とごねる私に筧くんは

「じゃ『今度』、オレの好きなもの作って」

その意味を考え一瞬にして顔を赤くした私を見て、

「また楽しみができた」

とニヤッと笑った。
< 26 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop