甘え下手の『・・・』
私は思っていた以上にフラレたことが堪えているようだ。
未練なんかじゃない。まったくない。
ただ、自分の想いを伝えられなかったこと、伝わっていなかったことがどうにも残っている。
また同じようになってしまったら?また『一人で大丈夫だろ?』と言われてしまうのが怖い。

「相沢、オレが言ったこと覚えてるか?」
筧くんが言った言葉。

『甘え下手なお前のことはオレがいつだって受け止めてやりたいと思ってる』

『頑張れるとこまで頑張ればいい。オレがそばにいて支える』

「…うん、覚えてるよ」

嬉しい言葉だったから。ちゃんと覚えてる。

「ん、覚えておけよ?ずっと」

私がうなづくと筧くんは私の頭をなでた。

「気をつけて帰れよ。ウチついたら連絡入れろ」

クールな筧くん。どうしてこんなに優しいの?知らなかったよ。ずっと近くにいたのに。

踏み込みたい、踏み込めない。
流されたい、飛び込めない。

もう、これが恋だとわかっているのに。
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