甘え下手の『・・・』
いつにもまして引かない真由香に少し戸惑いを感じた。

「いつも無口な筧くんが、うちらの前であんなこと言ったんだよ。ただの慰めなんかじゃない。あれは本気なはずだよ」

確かに…

筧くんはクールで無口で、4人でいてもあまり自分からは話さない。あんなに筧くんが饒舌だったのは初めてだったことで。だからこそ真由香や橋本くんは筧くんの言葉が『本気』ととれたんだ。…それは、私だって…

「あの時は私だってそう思ったよ。びっくりしたけど、正直、嬉しかったし…」

だけど、あの同期会から1ヶ月たったけれど、筧くんからは何のアクションもない。オフィスで顔を合わせても忙しくしているようで立ち話もできない。しても挨拶程度だ。

お互いの連絡先ももちろん知っている。それなのに今までプライベートな連絡をとったことはない。同期会の連絡だって私から筧くんに回したことはないし。筧くんからきたこともない。それはこの1ヶ月の間も同じで…。

「そうなると、あれはやっぱりその場のノリっていうか、やっぱり慰めるために言ってくれたんだ、って思っちゃうじゃない」
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