甘え下手の『・・・』
それでもイベントを前にして本当に忙しかった。

今日は出来上がってきた販促物のチェック。Bsデパートだけでなく他の取引店でも置いてもらえるようになったのでかなりの量だ。

「お疲れ様です」

開きっぱなしの会議室の入り口に立っていたのは筧くんだった。

「あっ、筧主任、どうされたんですか?」

素早く反応する同僚の女の子たちに私は出遅れていた。

「今、Bsデパートに行ってきたんだ。…あぁ、これ差し入れ。皆さんでどーぞ」

差し出された紙袋を女の子が受け取り中をのぞきこんで

「わぁ、チョコレートだぁ、わざわざ買ってきてくれたんですかぁ?」

キャッキャッ行ってる女の子たちをスルーし私に近づく筧くん。

「…わざわざありがとう」

「ついでだ。担当が『イベント楽しみにしてる』って言ってた。お前に伝えてくれって」

「ホント?わぁ、頑張んなきゃね」

「あぁ、頼んだ」

肩をポンポンと叩き『じゃあな』と会議室を出ていく筧くん。触れられた肩が熱くて見送れなかった私は気づかなかったんだ。

ドアの向こう側に…。

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