甘え下手の『・・・』
「あの、あの飾りをも少し上から広がるようにずらしてもらえるかな」

「ったく」

不機嫌な顔のまま筧くんはスーツの上着を脱ぎ私に投げると脚立をのぼっていき、

「ここでいいのか?」

「うん、そう!ありがとう。うん、いい感じになった」

満足してうなづいていると筧くんがおりてきて私の前に立ち塞がった。

「お前な、落ちてケガでもしたらどうする?今日はお前のかわりはいないんだぞ」

たしなめるように言われてハッとした。

「そうだね…今日は、そうだよね…。ごめんなさい。ありがとう、筧くん」

頭を下げると筧くんはホッとした表現をうかべ

「早く来て良かったよ。あと何かやることあるか?」

「ううん、もうだいたい終わったから。大丈夫だよ、ありがとう」

「相沢の『大丈夫』はあてにならないからな」

意地悪く言われて頬をふくらます私に筧くんはにやっと笑い

「今日はよろしくお願いしますよ、相沢さん。あぁ、ヘルプ頼んどいたから後で来るから」

「ありがとう、こちらこそよろしくお願いします」

筧くんがいる。心強さを感じる。
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