甘え下手の『・・・』
「そんなこと一言も言ってないだろ」

筧くんはまだ笑っている。そう言えば、筧くんが笑ってるのもレアだな。ニヤッはするけど、クスクスはあまり見たことがない。これはぜひその笑顔を見なきゃもったいない!そう思い顔を筧くんの方に向けると、こちらを見ていた筧くんと目があった。とても優しい目だった。

「相沢らしいな、って思っただけだ」

『ただ…』私から目をそらしドアをみる筧くん。

「このドアが開いて、…そうだな、社長なんかが乗ってきた時、ダンボールを持った女性社員の隣にいる手ぶらのオレを見たら、オレ、評価ガタ落ち確定だよな」

そう言っていつものニヤッを見せた。
それは困る!だって筧くんは営業部のエースで主任になったばかりだ。

「…筧くん、手伝っていただけますでしょうか…」

不本意ながら筧くんを見上げ、ダンボールを胸の前まであげると、

「はいはい」

ヒョイとダンボールを持ち上げ

「素直な相沢もやっぱりいいな」

そう言って優しく笑ったものだから、私は顔が赤くなったのを見られたくなくてうつむいた。
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