甘え下手の『・・・』
「引っ越しは賛成だな」

耳元で離す陸斗に顔が熱くなる。この距離に恥ずかしがってると『いい加減慣れろ』と呆れられる。

「陸斗の住んでる沿線にしようかな。そしたらもっと近くなるし、仕事終わりに一緒に帰ることもできるもんね?」

照れをごまかすように言ってみれば

「お前はバカだな」

とため息をつき、私の肩に顔をうずめ

「一緒に暮らすって選択肢はお前の中にないのか?」

と拗ねたように言う陸斗。

「えっ、えっ、一緒、一緒に?陸斗と?」

「何?嫌なわけ?」

「嫌なわけないじゃない!」

体を反転し陸斗に向かいあう。不機嫌で少し不安そうな陸斗と目があう。

「…いいの?」

「何が?」

「一緒に、暮らしたら、私もっと陸斗に依存しちゃうかも、しれないよ?」

恐る恐る聞いてみると、陸斗は優しく笑って

「いいに決まってるだろ。望むところだ」

そう言ってそっと抱きしめてくれた。

「全部受け止めるって言っただろ?」

< 70 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop