甘え下手の『・・・』
筧くんは営業部のあるフロアで降りず、販促部のフロアまでダンボールを運んでくれた。

「筧くん、ありがとう。助かりました。…本当は腕、けっこう痛かったの…」

受付で受け取った時、予想以上の重さにびっくりした。持っていられない重さではなかったけれど、うでがプルプル言う寸前だった。

「どういたしまして」

「お礼に、今度なんか奢るね」

素直になるのは勇気がいるし、なかなかなれない。ごまかすように視線をうろうろさせてしまう。そんな私に気づいて

「相沢、動揺しすぎだ」

苦笑いをしながら筧くんは、チョイチョイっと指先で私を誘導し、販促部のフロアからでると、

「頑張ってたのと、頼ってくれたご褒美だ」

そう言って私の頭をくしゃくしゃとなでてくれた。

「か、筧くん」

真っ赤になった私に筧くんはハハっと思いっきり笑い

「流される気になってきたか?」

と耳元で聞いてきた。
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