君の向こうのココロ
貴くんが怒りに近いイントネーションで、言った。


理緒は少し首をかしげながら、


「いつごろかなぁ、でも午前中には帰ってこないだろうね。」


と、慣れた感じでそう答えた。


「旦那の素行を、放置してる嫁も珍しいと思うけどね。」


貴くんがさらりと批判する。まぁこのセリフは、姉の理緒に向けた言葉ではなく、一般論的な言葉だと思うけど、


いい加減、神村も自分に対しての理緒の感情を、察すればこんな事にはならなかったのだと思う。


「私がなぁなぁにして来たからいけないんだよね。」


理緒がコーヒーを置きながら、ぽつりと言った。


「でも姉貴がどうにかしようとしても、事実動けなかったわけでしょ。」


貴くんがコーヒーを飲みながら、続ける。


「良いタイミングですよ。神村の反応が楽しみです。」


「さぁどうするかな。」


僕も悩みどころとなった。
沙空に接触して、それとなく聞き出す事も可能と言えば、可能だけど、


理緒は荒立てなくないと言っているし、とにかく理緒の投資が波に乗るまでは、神村を浮き足立たせておくのが一番なのだろうか…。


面白いことにもなるのかな…。
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