君の向こうのココロ
初夏の陽射はまだまだ沈む気配がない。


そして例年通りの梅雨のジメジメさがうっとうしかった。


まるで理緒ちゃんのココロ模様のようで悲しかった。


ましてや神村のことで悩んでいるのなら…


いっそのこと、このまま3人を連れて逃亡してしまいたい。


懐いてくれている子供たちを見るたびいつしかそんな思いさえ芽生えていた。


そんなことを考えながら奏太くんと晴夏ちゃんの気を紛らわせつつ、ケーキを食べた。


無添加キャロットシフォンケーキ。


これもまた雑誌に取り上げられた、人気のお店。


晴夏ちゃんは言った。


「これきっとお馬さんが食べたらかけっこ一等賞だね。ゴールの前で力が出るね。」


僕が、お馬?と一瞬悩んで、もしかしたら『兎と亀』の兎を馬って言ったのかなと勝手に解釈して、何の気なしに返してみた。


「これ食べてたらうさぎさんも、かめさんに負けないで最後まで走れたよね。」


と言うと、かなり怪訝そうな顔して、


「違うもん。うさぎさんは昼寝したから負けるの!テレビで走ってるお馬さんだもん。ゴールまで走るの!」


晴夏ちゃん…5歳とは思えない迫力で語る。
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