君の向こうのココロ
僕は声を掛けないと黙ってしまう理緒ちゃんが不安でしかたがない


「よく眠ってるね。二人とも。」


「そうですね。眠ると天使です。」


「じゃ起きてる時は?」


「起きてる時も天使。」


ガクッと僕の左肩が落ちた。


「あれ?面白い方がよかったですか?」


理緒ちゃんがにこにこする。


「いやいや。天使ときたら悪魔かしらと勝手に思っただけだよ。」


「悪魔か…。この子たちは天使です。まだまだ飛べませんが、素敵な羽根を備えた愛しい天使です。」


「ごめんごめん。悪魔じゃないよね。」


「謝ることないですよ。ときどき、みんな悪魔に見えるもん。」


バックミラー越しに、涙を流す理緒ちゃんを見た。


ミラーを確認しなかったら泣いていることにすら気付かなかったと思う。


とても静かに理緒ちゃんは泣いていた。


僕はどうしたらいいのかわからない。


でも何かしたい。


このまま放ってはおけない。


もうすでに車は神村家のアパートの前だった。


「着いちゃった…。」


ほぼ同時に僕らは声を出した。


しかも同じセリフを…。


こんな時にも僕のココロは喜んでる。
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