君の向こうのココロ
理緒はうつむいたまま泣いている。


押し殺さないで…自分を…。


僕は自然と理緒を抱き締めてた…。


「理緒らしくなってほしい。傷つくのは僕だけで良い。」


「先輩…。」


理緒が僕の顔を見上げた…。


「今、また、抱き締めてもらえて、夢なんじゃないかなって、思ってます。」


「夢じゃないよ。」


「このホッとする感じ、とても懐かしいの…」


「ホッとしてくれてる?」


「うん。あの頃に戻れるのなら…そうしたいくらい。」


僕は今までこんなにもはっきりと、自信を持って人に話をした事はないと思う。


でも、今でなきゃ、また後悔する。


また貴くんに怒られてしまう。


それに、こんなにも弱っている理緒をほっとけないよ。


「神村から精神的に嫌なことされたのは、誰からみても理緒が悪い事ではないって言えると思う。

そこをねじ曲げて考えていて、楽ならそれでいいと思うよ。」


「今先輩が、そういってくれてココロが軽くなった気がする。」


「晴夏と奏太がそばにいてくれるためには、神村のそばにいなきゃいけないんだって、強く思ってた。」

< 90 / 206 >

この作品をシェア

pagetop