君の向こうのココロ
やばいよ…理緒。


煩悩が目を覚ましてしまう…。


「ね。先輩、」


理緒が僕の腕を軽く触る。


どきーんと胸が驚く。


「お茶飲もうよ。」


理緒がキッチンへ行く。


今理緒が何かするのかと思った。


僕に手を掛けてキスするのかと勝手に妄想してしまう。


理緒が抱き付いてくるのかと思った。


理緒はハナ歌を歌ってる。


神村をとっちめる前に僕がとっちめられてしまう。


それじゃ理緒をココロから救えない。


それは最初からわかってる。

ここでコトをしてしまえば神村と同じになってしまう。


違う。僕は違う。


そう、僕は理緒から求められたら応える。


そう決めたんだ。


それを守らなくちゃ意味がない。


都合よく考えないんだ。


いけない。


いけない。


僕は必死に抑えた。


暴走しそうな自分を説得した。


「先輩難しそうな顔してますけど…どしたの?」


戻って来た理緒が湯飲みを置きながら、言う。


紛れもなく理緒のことを考えていたんだよ。


簡単じゃない関係だから、これ以上越えない。


頑張ろう、僕。
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