月夜の涙
「彼、凄い人気だね。」
「そうだね。もう一日目にして注目の的だね。」
私と朔はプリントの山を運んでいた。席の周りが人で溢れかえり、私は朔と共に教室を出た。冬は転校生には興味があるみたいだが、塾の課題に追われているようでそれどころではない様子だったのでほうっておくことにした。あそこで声をかけると怠けるだろう。そして通りかかった先生に捕まり荷物運びに使われることになった。
「数学もスラスラと解いていたし、きっと都内の有名な高校に通っていたんだろうね。」
「そうね。でも、なんでこんな時期外れにこの学校にきたのかな。しかも、この学校は設備が完全じゃないし。」
歴史はあるわけではなく、新しい校舎ではあるけど、規模が小さい。
「さあ、事情があるのは確かだろうね。」
彼はそういうとふと、何かをおもいだしたようだった。
「そういえば今日の部活の内容どうする?」
「え?えっーと。」
私と朔は歴研ー正しくは民俗研究活動部に所属している。私が歴史好きなのと、朔はお稽古や病院のため、この部に入ることにした。前まではかなり自由な先輩ー、お騒がせ部長が趣向を凝らしたものをテーマに活動していたが卒業したため、特に研究したいこともなかった。というより、どうすればいいのかわからなかった。
「んー。どうしようかな。特にないし…。朔は?」
「僕は…ないね。とりあえず、好きなことができるんだからできる限り研究したいけど。」
私は彼を見つめてふと思い出す。
「…あっ。私、今日もあの夢見た!」
朔は私を見つめる。その先の話を伺っているようだ。
「今日の夢はいつも通りなんだ。彼と会って、彼を追いかけて見失ってまた、あの月を見上げるの。」
「聞けば聞くほど不思議な夢だね。専門家に任せたいとこだけど、信じてもらえそうもないし。」
「だよね。朔は?」
「僕も今日は見たよ。いつもと同じ火を見つめてた。」
私は朔にだけはあの夢のことを話していた。小さい頃から朔は何かあるとすぐに気づく。私が夢を見だした時にもその異変に気付いた。そしてきわめつけは私が涙を流しながら蒼の名前を呼んだことだ。深く追求された後、私は自白した。その数日後には朔も不思議な夢を見るようになった。なんでも火を見つめ続けるという奇妙な夢だった。それ以来私達は夢について色々と話し合うようになった。
「火を見つめてる夢って不思議よね。」
「そうだね。でも、君のその男も不思議だね。」
「そうね。あっ!」
私は目の前にいた教師を見て思い出した。
「ごめん。朔!私ノート提出しなきゃいけないの!これお願いね!」
「えっ、ちょっ!」
私は朔にプリントを押し付け教室へ向かって走る。そして鞄からノートを取り上げて教師の後を追う。するとまたもや曲がり角から誰かが急いで走ってくる。
ーぶつかった…。
私は謝罪の気持ちと共にぶつかる覚悟をした。
「…のわっ!」
「…でぅ!」
互いにぶつかり後ろに倒れる。
「ごめんね!大丈夫!?」
本日二人目の犠牲者だった。
「大丈夫だよ。伊澤さんは?」
私は彼を見る。柚木駆君だった。同じ歴研と他の部にも所属している。違うクラスで理系のクラスにいる。
「あ、ごめんね。荷物散ばしちゃった!拾うよ!」
「俺の方もごめん。急いでたから走ってたんだ。」
かれはそう言いながらファイルとプリントとノートを拾い出す。
「あっ、あとね。今日の部活の時に話そうと思ってたんだけど。これから調べたいこととか考えてね!」
「あ、うん。わかった。」
私は早歩きでその場を立ち去る。
「すみません!先生!これ、提出用のノートです!」
「おっ、やっときたか。どれどれ…。」
先生はノートをめくるが何かある様子で私をみた。
「えっと。どうしましたか?」
「いや。このノート、…数IIIのないようだけど…。」
「えっ。」
私はノートを確認した。それは間違いなく数IIIの内容だった。
そういえば、さっき…!
私は自分の愚かさに呆れてしまった。
私はノートをみて呆れていた。よもや、このようなことになるとは思いもしなかった。
ー化学の授業は教室に入れないし
化学は二時間続けて行われる。なんでも実験を行っているらしい。休憩時間もそのためかずれてるし渡せそうにもない。教室は鍵が閉まっている。
「元気ないね。どうしたの?」
朔はそんな私を見た。
「ノート…入れ違いになって。返せてないんだ…。」
「大変だね。まあ、理系のクラスの授業が終わるまで待つしかないけど、それより、ご飯にしよ?」
私はご飯と言う言葉を聞いて元気になる。
「ご飯ー!!」
冬はとても明るい顔で近づいてきた。なにやらさっきの死にそうな顔が嘘のように明るかった。
「…寝てたな。」
「ご明察の通り!いやー、数学って、何故か眠くなるのよね。」
「わかる…。」
「こらこら。」
朔は私と冬に突っ込みをいれた。すると浅黒い肌の青年がやってきた。
「やっと、昼だー!」
私と朔は驚く。そこには田村義家がいた。浅黒い肌の理由は屋外での野球だ。校内には野球がないが何故かうちの学校にきた変わった人物である。朔との一番の男友達だが彼は教師を悩ますほどの遅刻魔だ。しかし、今までは四時間目あたりになるまでには既にいる。昼休憩に現れるのは滅多にない。
「お前、休みじゃなかったのか?」
「ん?ああ、教師に捕まってた。あの鉄人うぜーのなんの。みっちりくどくど言い出してさー。二時間も正座はきついっつーの。」
「え?来てなかったの。寝てたから知らなかったー」
私と朔はあきれた。この二人のマイペースさに。
「で、朔!肉くれ!今日も日の丸弁当なんだ!」
「いいけど、ピーマンとかも食べろよ。」
朔は弁当を差し出す。
「うっ。…善処します。」
……目が外れてる。絶対に騙そうとしてる…!!朔は怒ると怖い。それをそろそろ学んだ方がいいのに。
「あれ?まだ見てない顔だね。」
そこに司馬君が駆け寄って来た。どうやらトイレで用を足していたのだろう。確かに司馬君は朝から一度も会ってない。
「お、お前が噂の転入生か!俺、田村義家だ。よろしくな!」
「よろしくね。」
「あ、司馬君もお昼一緒にどう?弁当だったらだけど。」
冬は持っているパンをひらひらとふる。学食だった場合は一緒には食べれない。
「それじゃ、お邪魔しようかな。」
「歓迎するよ。」
「私も。」
そうして私達はご飯を一緒に食べた。
ーー柚木sideーー
「どうしよう…」
俺は教室の窓から覗く。彼女は嬉しそうにご飯を食べてる。
ー今ここで話しかけたらこのノートについて言及されることになるだろう。
けれどそうは言っても七時間目には数三の授業がある。できれば取りに行きたい。 俺はため息をつく。
ーすぐにノートの確認をしなかった俺の責任でもあるし、放課後に改めて渡すことにしよう。
次は物理の準備がある。ご飯を上で食べてすぐに準備を始めなくてはならない。
俺はそう思ってノートと共にA組の教室を後にした。
「んー!お腹いっぱい!」
私は朔を見て笑う。
「それで、話は戻すけど、ノート数III?だっけ?あっちのクラスは六時間目あたりそのはずだよ。返しに行こう?」
「そうなの!?」
「うん。そう。」
私は隣のクラスを覗く。しかし、教室にいるのは二、三人ぐらいだけだった。
「どうしよ。いない…。」
私は教室の前で立ち尽くした。
「じゃあ、机の上に置いとこうか。ルーズリーフでメッセージを書いて置いて。部活のときにきちんと話せばいいよ。」
「そっか。そうだね!」
私は早速そうすることにしてシャーペンでメモを書いておくことにした。
「ーーっあ、凛ちゃん!」
「およっ?どしたん?なんかあったん?」
理系クラスの柳凛。私の漫画友達だ。
「あのね。これ、柚木君の机に置いておきたいんだけど…。どこかな?」
「ああ、あそこだよ。置いておいてあげる。」
「ありがと!いやー、ぶつかっちゃってノートが入れ替わっちゃって…。」
「ああ。それで何やら焦ってたのね。」
焦ってた…?
「えっと。焦ってたって?」
「さっきの授業中そんな様子だったよ?なんかノートを読んでたし。友達が見せろだなんだ言ってたけどなんていうか、すごく…怒ってた。まさかあそこまで怒るなんて…って思ったけど人のならまあ、無闇に見せていいものじゃないよね。」
私はそれを聞いてほっとする。
私の英語はひどい。赤だらけだ。ただでさえ発展クラスにいるのもギリギリなのに…。
「えっと。じゃあお願いね。次の漫画楽しみにしててね!」
「私もオススメ持ってくるね!」
ーー楽しみだよ!凛氏!
私達は互いに親指を立てた。
「あれ?冬。朔は?」
「生徒会で運動会の話し合いだって。あと、部活の予算について。」
朔は風紀委員長で生徒会にいる。歴研という部活があるのは全部長の実績と彼の生徒会での副会長という地位のためだろう。本当にありがたい。
「冬ちゃんのテニス部はいつまで活動してるの?」
「私は六月までを予定してるよ。他のメンバーは私立の合格圏内目指してるから七月までしてるって。」
「へー。そうなんだ。」
冬ちゃんは一心不乱に数学を解いていた。
「光はどうするの?歴研。」
「んー。とりあえず論文大会に出るんじゃないかな。だからそれがすみ次第…。六月かな?」
冬は私を見て質問する。
「答えは出たの?大学」
私はその質問を聞いて心臓が飛び上がった。
「…えっとね。進学は希望してるよ?でも、将来の夢が…。」
私の希望では心理士になりたい気持ちもある。夢のことが起因ではあるけれど。しかし、それが本当にやりたいことなのかがわからない。
「まあ、まだ時間はあるし大丈夫だと思うけど。」
私は冬にうなづいて見つめる。
「…ーあーもー!わかんない!知るかー!!」
彼女は錯乱状態になったので私は席に戻ることにした。
ーー???sideーー
教室にはだれもいない。ノートを開き、見つめる。まぎれもない彼女の字だ。男はそのノートをめくる。
ー夢日記か。
内容は簡潔に書かれてはいるが印象深いものは事細かに書かれている。
四月一日
今日の夢は私が英語の時間で問題を黒板に解いていた。スペルミスで三角になった。
追記欄;なった。
その字を見て笑ってしまう。ツッコミをいれたくなった。
「…」
男はノートを見てある所に目が止まる。
ーー今日もあの夢を見た。ーー
男はその文をまじまじと見た。あの夢…か。男は本を閉じて教室を後にした。
「そうだね。もう一日目にして注目の的だね。」
私と朔はプリントの山を運んでいた。席の周りが人で溢れかえり、私は朔と共に教室を出た。冬は転校生には興味があるみたいだが、塾の課題に追われているようでそれどころではない様子だったのでほうっておくことにした。あそこで声をかけると怠けるだろう。そして通りかかった先生に捕まり荷物運びに使われることになった。
「数学もスラスラと解いていたし、きっと都内の有名な高校に通っていたんだろうね。」
「そうね。でも、なんでこんな時期外れにこの学校にきたのかな。しかも、この学校は設備が完全じゃないし。」
歴史はあるわけではなく、新しい校舎ではあるけど、規模が小さい。
「さあ、事情があるのは確かだろうね。」
彼はそういうとふと、何かをおもいだしたようだった。
「そういえば今日の部活の内容どうする?」
「え?えっーと。」
私と朔は歴研ー正しくは民俗研究活動部に所属している。私が歴史好きなのと、朔はお稽古や病院のため、この部に入ることにした。前まではかなり自由な先輩ー、お騒がせ部長が趣向を凝らしたものをテーマに活動していたが卒業したため、特に研究したいこともなかった。というより、どうすればいいのかわからなかった。
「んー。どうしようかな。特にないし…。朔は?」
「僕は…ないね。とりあえず、好きなことができるんだからできる限り研究したいけど。」
私は彼を見つめてふと思い出す。
「…あっ。私、今日もあの夢見た!」
朔は私を見つめる。その先の話を伺っているようだ。
「今日の夢はいつも通りなんだ。彼と会って、彼を追いかけて見失ってまた、あの月を見上げるの。」
「聞けば聞くほど不思議な夢だね。専門家に任せたいとこだけど、信じてもらえそうもないし。」
「だよね。朔は?」
「僕も今日は見たよ。いつもと同じ火を見つめてた。」
私は朔にだけはあの夢のことを話していた。小さい頃から朔は何かあるとすぐに気づく。私が夢を見だした時にもその異変に気付いた。そしてきわめつけは私が涙を流しながら蒼の名前を呼んだことだ。深く追求された後、私は自白した。その数日後には朔も不思議な夢を見るようになった。なんでも火を見つめ続けるという奇妙な夢だった。それ以来私達は夢について色々と話し合うようになった。
「火を見つめてる夢って不思議よね。」
「そうだね。でも、君のその男も不思議だね。」
「そうね。あっ!」
私は目の前にいた教師を見て思い出した。
「ごめん。朔!私ノート提出しなきゃいけないの!これお願いね!」
「えっ、ちょっ!」
私は朔にプリントを押し付け教室へ向かって走る。そして鞄からノートを取り上げて教師の後を追う。するとまたもや曲がり角から誰かが急いで走ってくる。
ーぶつかった…。
私は謝罪の気持ちと共にぶつかる覚悟をした。
「…のわっ!」
「…でぅ!」
互いにぶつかり後ろに倒れる。
「ごめんね!大丈夫!?」
本日二人目の犠牲者だった。
「大丈夫だよ。伊澤さんは?」
私は彼を見る。柚木駆君だった。同じ歴研と他の部にも所属している。違うクラスで理系のクラスにいる。
「あ、ごめんね。荷物散ばしちゃった!拾うよ!」
「俺の方もごめん。急いでたから走ってたんだ。」
かれはそう言いながらファイルとプリントとノートを拾い出す。
「あっ、あとね。今日の部活の時に話そうと思ってたんだけど。これから調べたいこととか考えてね!」
「あ、うん。わかった。」
私は早歩きでその場を立ち去る。
「すみません!先生!これ、提出用のノートです!」
「おっ、やっときたか。どれどれ…。」
先生はノートをめくるが何かある様子で私をみた。
「えっと。どうしましたか?」
「いや。このノート、…数IIIのないようだけど…。」
「えっ。」
私はノートを確認した。それは間違いなく数IIIの内容だった。
そういえば、さっき…!
私は自分の愚かさに呆れてしまった。
私はノートをみて呆れていた。よもや、このようなことになるとは思いもしなかった。
ー化学の授業は教室に入れないし
化学は二時間続けて行われる。なんでも実験を行っているらしい。休憩時間もそのためかずれてるし渡せそうにもない。教室は鍵が閉まっている。
「元気ないね。どうしたの?」
朔はそんな私を見た。
「ノート…入れ違いになって。返せてないんだ…。」
「大変だね。まあ、理系のクラスの授業が終わるまで待つしかないけど、それより、ご飯にしよ?」
私はご飯と言う言葉を聞いて元気になる。
「ご飯ー!!」
冬はとても明るい顔で近づいてきた。なにやらさっきの死にそうな顔が嘘のように明るかった。
「…寝てたな。」
「ご明察の通り!いやー、数学って、何故か眠くなるのよね。」
「わかる…。」
「こらこら。」
朔は私と冬に突っ込みをいれた。すると浅黒い肌の青年がやってきた。
「やっと、昼だー!」
私と朔は驚く。そこには田村義家がいた。浅黒い肌の理由は屋外での野球だ。校内には野球がないが何故かうちの学校にきた変わった人物である。朔との一番の男友達だが彼は教師を悩ますほどの遅刻魔だ。しかし、今までは四時間目あたりになるまでには既にいる。昼休憩に現れるのは滅多にない。
「お前、休みじゃなかったのか?」
「ん?ああ、教師に捕まってた。あの鉄人うぜーのなんの。みっちりくどくど言い出してさー。二時間も正座はきついっつーの。」
「え?来てなかったの。寝てたから知らなかったー」
私と朔はあきれた。この二人のマイペースさに。
「で、朔!肉くれ!今日も日の丸弁当なんだ!」
「いいけど、ピーマンとかも食べろよ。」
朔は弁当を差し出す。
「うっ。…善処します。」
……目が外れてる。絶対に騙そうとしてる…!!朔は怒ると怖い。それをそろそろ学んだ方がいいのに。
「あれ?まだ見てない顔だね。」
そこに司馬君が駆け寄って来た。どうやらトイレで用を足していたのだろう。確かに司馬君は朝から一度も会ってない。
「お、お前が噂の転入生か!俺、田村義家だ。よろしくな!」
「よろしくね。」
「あ、司馬君もお昼一緒にどう?弁当だったらだけど。」
冬は持っているパンをひらひらとふる。学食だった場合は一緒には食べれない。
「それじゃ、お邪魔しようかな。」
「歓迎するよ。」
「私も。」
そうして私達はご飯を一緒に食べた。
ーー柚木sideーー
「どうしよう…」
俺は教室の窓から覗く。彼女は嬉しそうにご飯を食べてる。
ー今ここで話しかけたらこのノートについて言及されることになるだろう。
けれどそうは言っても七時間目には数三の授業がある。できれば取りに行きたい。 俺はため息をつく。
ーすぐにノートの確認をしなかった俺の責任でもあるし、放課後に改めて渡すことにしよう。
次は物理の準備がある。ご飯を上で食べてすぐに準備を始めなくてはならない。
俺はそう思ってノートと共にA組の教室を後にした。
「んー!お腹いっぱい!」
私は朔を見て笑う。
「それで、話は戻すけど、ノート数III?だっけ?あっちのクラスは六時間目あたりそのはずだよ。返しに行こう?」
「そうなの!?」
「うん。そう。」
私は隣のクラスを覗く。しかし、教室にいるのは二、三人ぐらいだけだった。
「どうしよ。いない…。」
私は教室の前で立ち尽くした。
「じゃあ、机の上に置いとこうか。ルーズリーフでメッセージを書いて置いて。部活のときにきちんと話せばいいよ。」
「そっか。そうだね!」
私は早速そうすることにしてシャーペンでメモを書いておくことにした。
「ーーっあ、凛ちゃん!」
「およっ?どしたん?なんかあったん?」
理系クラスの柳凛。私の漫画友達だ。
「あのね。これ、柚木君の机に置いておきたいんだけど…。どこかな?」
「ああ、あそこだよ。置いておいてあげる。」
「ありがと!いやー、ぶつかっちゃってノートが入れ替わっちゃって…。」
「ああ。それで何やら焦ってたのね。」
焦ってた…?
「えっと。焦ってたって?」
「さっきの授業中そんな様子だったよ?なんかノートを読んでたし。友達が見せろだなんだ言ってたけどなんていうか、すごく…怒ってた。まさかあそこまで怒るなんて…って思ったけど人のならまあ、無闇に見せていいものじゃないよね。」
私はそれを聞いてほっとする。
私の英語はひどい。赤だらけだ。ただでさえ発展クラスにいるのもギリギリなのに…。
「えっと。じゃあお願いね。次の漫画楽しみにしててね!」
「私もオススメ持ってくるね!」
ーー楽しみだよ!凛氏!
私達は互いに親指を立てた。
「あれ?冬。朔は?」
「生徒会で運動会の話し合いだって。あと、部活の予算について。」
朔は風紀委員長で生徒会にいる。歴研という部活があるのは全部長の実績と彼の生徒会での副会長という地位のためだろう。本当にありがたい。
「冬ちゃんのテニス部はいつまで活動してるの?」
「私は六月までを予定してるよ。他のメンバーは私立の合格圏内目指してるから七月までしてるって。」
「へー。そうなんだ。」
冬ちゃんは一心不乱に数学を解いていた。
「光はどうするの?歴研。」
「んー。とりあえず論文大会に出るんじゃないかな。だからそれがすみ次第…。六月かな?」
冬は私を見て質問する。
「答えは出たの?大学」
私はその質問を聞いて心臓が飛び上がった。
「…えっとね。進学は希望してるよ?でも、将来の夢が…。」
私の希望では心理士になりたい気持ちもある。夢のことが起因ではあるけれど。しかし、それが本当にやりたいことなのかがわからない。
「まあ、まだ時間はあるし大丈夫だと思うけど。」
私は冬にうなづいて見つめる。
「…ーあーもー!わかんない!知るかー!!」
彼女は錯乱状態になったので私は席に戻ることにした。
ーー???sideーー
教室にはだれもいない。ノートを開き、見つめる。まぎれもない彼女の字だ。男はそのノートをめくる。
ー夢日記か。
内容は簡潔に書かれてはいるが印象深いものは事細かに書かれている。
四月一日
今日の夢は私が英語の時間で問題を黒板に解いていた。スペルミスで三角になった。
追記欄;なった。
その字を見て笑ってしまう。ツッコミをいれたくなった。
「…」
男はノートを見てある所に目が止まる。
ーー今日もあの夢を見た。ーー
男はその文をまじまじと見た。あの夢…か。男は本を閉じて教室を後にした。