【完】螺旋のように想いを告げて
「幼い子供だからと言って勝手に離婚を決めたこと、本当に申し訳ないって思ってる」
「いいよ。覚えてないし、何不自由なく育ててくれたことには感謝してる。大学にも通わせてくれて」
「ううん、違うの。だから家族っていうものをちゃんと教えてあげられなかった。父親がいて、母親がいて、子供がいて。そういう温かい家庭を教えたかったのにね」
思えば、今でも父親という存在は苦手だ。
そうか。俺は父親を知らないから、わからないんだ。
でも、それでも不幸せに感じることがなかったのは咲良のお陰かもしれない。咲良の家の温かい家庭を知っていたから。
母さんは再び皿を洗い始める。さっきよりもスピードが落ちているのは気のせいじゃない。
きっと、離婚したその日から悩んでいたんだろう。
俺を想ってくれていること、ずっと知っていたから。だから、母さんの気持ち、何となく感じる。