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「朝ちゃんおはよう」
わたしは透明なグラスに
冷蔵庫から出したキンキンに冷えたミネラルウォーターを注ぎながら朝の挨拶をした。
おばあちゃんの名前は朝恵といった。
城島朝恵ーーが本当の名前。
おばあちゃんといっても反応してくれない。なぜなら彼女には、
自分がおばあちゃんであるという自覚がないから。
自分のことを、76歳の女性ではなく、10歳の少女だと思っている。
わたしのことを、孫ではなく、親しい友達と思っている。
「ちーちゃん、おはよう」
朗らかに朝ちゃんが笑った。
まるでゆっくりと花が開くみたいな笑顔だなと思う。
目尻の皺が深い。
笑えば笑うほど、その素敵な皺は深くなる。
ちーちゃん、と 朝ちゃんはわたしをそんな風に呼んだ。
それもここ一年くらいで
それまでは朝ちゃんはわたしのことを 千紗、と呼んでいたし
わたしも朝ちゃんのことを
おばあちゃん、と呼んでいた。
歯が抜け出した朝ちゃんは
わたしのことをチシャ、と呼ぶようになった。
チシャ、も難しくなって
ついには ちーちゃんに落ち着いたというわけだ。
わたしは透明なグラスに
冷蔵庫から出したキンキンに冷えたミネラルウォーターを注ぎながら朝の挨拶をした。
おばあちゃんの名前は朝恵といった。
城島朝恵ーーが本当の名前。
おばあちゃんといっても反応してくれない。なぜなら彼女には、
自分がおばあちゃんであるという自覚がないから。
自分のことを、76歳の女性ではなく、10歳の少女だと思っている。
わたしのことを、孫ではなく、親しい友達と思っている。
「ちーちゃん、おはよう」
朗らかに朝ちゃんが笑った。
まるでゆっくりと花が開くみたいな笑顔だなと思う。
目尻の皺が深い。
笑えば笑うほど、その素敵な皺は深くなる。
ちーちゃん、と 朝ちゃんはわたしをそんな風に呼んだ。
それもここ一年くらいで
それまでは朝ちゃんはわたしのことを 千紗、と呼んでいたし
わたしも朝ちゃんのことを
おばあちゃん、と呼んでいた。
歯が抜け出した朝ちゃんは
わたしのことをチシャ、と呼ぶようになった。
チシャ、も難しくなって
ついには ちーちゃんに落ち着いたというわけだ。