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「お父ちゃんにもお供えしなきゃいけないわ」
朝ちゃんが
一等上級な白くて薄いお皿にクッキーをならべて、
仏壇の方へ運んでいくのを
わたしはもぐもぐと口を動かしながら
上目でチラリと見た。
お父ちゃん、というのは
おばあちゃんの夫だ。
つまりわたしのおじいちゃん。
おじいちゃんは2年前に亡くなった。
亡くなる間際は痴呆が進み、
わたしのことはおろか、朝ちゃんのこともわからなくなっていた。
おじいちゃんは身体も悪く、
朝ちゃんはおじいちゃんの介護がすごく大変そうだったから
ベットの上に寝たきりの
何の言葉も発さなくなってしまったおじいちゃんが亡くなったと知らされたとき
わたしは悲しいよりも先にほっとした。
朝ちゃんがその労苦から解放されることをほっとした。