見守る恋じゃダメですか
商店街を歩いていると、よく知った後ろ姿を目にする。
もちろんその隣には彼女の姿もあった。

楽しそうに笑い合っている姿に胸が痛み、嫌な自分が顔を出す。
今までの幸せな気分までも飲み込むかのように。

早く目を逸らさなきゃ…
そう思っているのに目を離せない。

彼らは私に気づくこともなく、優し気に微笑んでキスを交わした。

涙が頬を伝った。
苦しくて、私の一番大切にしていた何かが大きな音を立てて壊れた気がした。

どうして…
こんなの見たくなかった。

 「どうしたんですか?」

もう何も聞こえない。

 「夏華さ…!?」

輝琉君の声が微かに聞こえると同時に
私の視界は真っ暗になった。

< 66 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop