黒猫系男子は今日も気まぐれ!?
 

「あれ?あの人って…。」

委員長を囲む人だかりの人を観察していたら、昨日エリカが話していたチャラ男くん…。じゃなかった、渡辺くんを見つけた。

「あー、あのチャラ男も委員長のおこぼれが欲しいみたい。」
「…おこぼれって。」

その言い方良くないよ。と言うと、エリカはフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。どうやらご機嫌がななめらしい。

それにしても、ほんの少し教えて貰っただけで成績は上がるのか。そこが気になった。

「もし成績が上がるなら私も教えて貰おうかな。」
「え、ハルもあの真面目ちゃんに教えてもらうの!?」

エリカが素っ頓狂な声を上げた。思いのほか声が大きかったらしく、委員長を囲んでいた人たちがこちらへ振り返った。
「真面目ちゃん」という言葉が聞こえたのか、委員長は少し顔を俯かせた。

「あ、やば。」

エリカが困ったように笑う。その瞳は「どうしよう…」と困惑の色を浮かべていた。
そんなことされても私にはどうしようも出来ないよ、と意味を込めて首を横に振った。

「なあ、お前らも愛姫に勉強を教えて貰ったら?」

気まずい雰囲気を変えたのは、例のチャラ男くんだった。
ナイス!チャラ男くん!

「アイ?」

私が呟くとチャラ男は、「委員長の名前だよ!愛の姫と書いて「愛姫」!可愛いよな!」と眩しい笑顔を向けた。

思ったよりチャラ男くんは優しいかもしれない…?エリカが話していた「常識人」の意味を少しだけ理解したかも。

「クラスの姫ことアイの勉強の教え方は上手いぜ!今井も今野も来いよ!」

何だかこのチャラ男くん馴れ馴れしいな。
でも、勉強を教えて貰えるならありがたい。

「ねぇ、エリカも行こうよ。」

隣で固まってるエリカの手を軽く引っ張った。

「……うん、分かった。」
小さく力無げに呟いたエリカの頬っぺたは、なぜかイチゴよりも真っ赤に染まっていた。

 
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