黒猫系男子は今日も気まぐれ!?
 

問題を答えた中野さんは何事も無かったかのように席に座る。教室から拍手の音がパチパチと響く。
その拍手の音は、まるでラムネが耳元で弾けているように私には聞こえた。

目が合ったのはほんの数秒にも満たない時間だったと思う。
しかし、私は数分数時間と感じるくらい中野さんと目が合っていたような感じがした。

…目が合うことってよくあるよね。

同じ教室にいる人同士、目が合うことなんて日常茶飯時だろう。
これで、よく女子が誰々くんと目が合った!だなんて楽しそうに、キャッキャッとしているけれど、一度目が合っただけで浮かれる程私はバカではない。

それなのに、


(何でこんなにドキドキ心臓がうるさいんだ。)


授業終了を知らせるチャイムが鳴り、本日の学校が終了した。
部活動やら委員会やら忙しそうに支度をし教室を飛び出すクラスメイト。
部活に所属していない私は、カバンに教科書やペンケースをしまい、呑気に帰り支度をしていた。
すると、

「ハル!今日の放課後って空いてる?空いてるよね。ハルは暇人だもんね。」

と、失礼な言葉が飛んできた。
この声。この言葉。顔を見なくても誰なのか充分に分かる。

「エリカも暇人でしょ。」
「まあね。」

隣の席へ視線を向けると、案の定、今野絵莉花が立っていた。背が高く手足がスラッとしていてスタイル抜群。さらに胸元まで届くサラサラと綺麗な薄い金色の髪は地毛らしい。

それに比べて私は、平均的な身長に平均的な体重。髪の毛も伸ばそう!と決意するけど、半年経たずに切ってしまう。今、やっと鎖骨あたりまで伸びてきてミディアムといったところだ。

へへ、と笑いながら「暇人」と言ったことを、誤魔化すように舌をチロッと出すエリカ。こんな仕草、顔が整っていなければ正直引く。

「エリカは今日部活ないの?」
「今日はバスケ部に体育館貸してるから体操部はないみたい。」
「へー、大変だね。」
「学校側もさ、もう少し体育館を広めに設計出来たなかったのかな~。」

エリカの小言を聞きながら私たちは教室を後にした。

 
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