Dance in the rain
奥行きのある店内には、広いカウンター席と、数卓のテーブル席。
漆喰っぽい壁にはウッディな家具がぴたりと映えていて、窓にはグリーンが涼しげに垂れていて。
天井には、真っ白なファンがゆるゆるって回っていて。
雑誌のカフェ取材とか来ちゃいそうな、そんなかわいらしいお店。
もちろん、というか。
席は、20代くらいの女子グループでほとんど埋まっていた。
そして、その中であたしは。
めちゃくちゃ浮きまくっていた。
——わぁずぶぬれ。かわいそ。
——何あの恰好。
——おっきなスーツケース。家出じゃない?
——なーんか、ミジメな感じ?
窓際の席の4人組から、聞えよがしに笑い声が聞こえた。
女子大生っぽいコーディネートと隙のないメイク。
それらが、よけいにあたしの惨めさを際立たせる。
かあぁあって身体が熱くなって。
そこに入ったことを後悔した。
早く出ていこう。
そう思うのに。
視線に縛られたみたいに、あたしは動き出すことができない。
早く、早く……っ!
心の中で呪文みたいに唱えて、足に力を込めた時。