Dance in the rain
「ばぁか、だから迎えに行くっつったのに」
静かな、でも店の隅まで届く男性の声が響いた。
え?
「こういう時は早めに連絡しろよ。もっと甘えろ」
コツコツ……
足音が響いて、黒い大きなスニーカーが、あたしの目の前で止まった。
視線を持ち上げて。
あたしは今度こそ、カチンて、固まってしまった。
180はゆうに超えてるだろう長身の男性が、そこにいた。
長めの漆黒の前髪から、強い意志を秘めた艶やかな瞳があたしを射抜いて。
思わず息をするのも忘れて、見とれてしまう。
くいって片側だけ上がった唇。
キリリと引き締まった、骨ばった頬。
V字に開いた襟からのぞく、胸元の凹凸……
すべてが男っぽくて、つまり、とてつもなくセクシーで、ドギマギしてしまう。
な、なんなのこの人、すごいレベル高っ……。
ぼうっとしていると。
スーツケースを勝手に転がした彼は、「ほら、ここ座れ」ってあたしを促して、
カウンター席に座らせた。