Dance in the rain

——もしかしてあの人、あの子の彼氏!? すんごいイケメンじゃん!
——えーっいいなーっ! うらやましい〜。
——あんないい男と付き合えるなんてっ!

は……?

最初のショックから立ち直ると。
後ろの方で交わされる会話が徐々に耳に入ってきて。
あたしは心の中で盛大に首を振った。

いやいやいや、付き合ってないし。
つか、こいつ誰!?

彼は今や、隣に座って頬杖をつき、じぃいってまっすぐ、あたしを見つめてる。

「すっげぇ会いたかったんだぜ」
その目を切なげに細めて。
指を伸ばして、あたしの頬に触れる。

な、な、なんなのっ? 
いきなりの、この激甘なムードはっ!?


「や、あの……っ」


どちら様? って聞こうと口を開きかける。

「ほら、これで早く拭いて。もう6月だからって油断してると風邪ひいちゃうからね」

高めの涼やかな声がして。
振り返ると、生成りのエプロンをかけた男性があたしにタオルを差し出していた。
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