Dance in the rain
9. ヒートアイランド①
真夏の朝日、そののしかかるみたいな圧力に屈して。
あたしは薄く、目を開いた。

もう……朝だ。
上半身を起こすと、部屋に翔也の姿はなくて。

そのまま視線を、強い光があふれる方へと移した。

いつの間に降ってたんだろう。
窓のすぐ外まで伸びた木の葉も幹も、しっとり濡れてキラキラ光ってる。

窓を開けると、外の空気が流れ込んできた。

雨上がりの朝、いろんなものが洗い流された大気は、
いつもよりずっと澄んでるような気がする。
あたしはそれを、胸いっぱいに吸い込んだ。

緑の、濃い匂いがする。

あぁ……今日はいい天気になりそう。もう、夏だなあ。
そんな呑気なことを考える。

季節の移り変わり。

今まで、そんなこと考える余裕なんかなかった。
立ち止まることも、振り返ることもなく。

走って、走って。走り続けて。
踊って、踊って。踊り続けて。
自分のことだけにきゅうきゅうしていた。
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