Dance in the rain
着替えを済ませてドアを開けると、廊下にほわんて、何かを焼く香ばしい匂いが漂ってた。
え……なんだろ。
もしかして翔也、朝ごはん作ってるの?
廊下の先、ドアを開けてのぞくと、キッチンに立っていた翔也が振り返った。
あっという間に。
用意していた「おはよう」も「昨夜はありがと」もぶっ飛んで、
あたしは「あの、えっと……」って、慌てふためくばかり。
うわ、ダメだ……なんかあたし、ものすごく挙動不審だっ!
でも、だって。
どんな顔して会えばいいのか……
「ぷっ」
え?
翔也を見ると、笑いをかみ殺しながら、手の中でくるくるって何かを回して
……え。何あれ。
ちょっと待って、サインペン!?
……嫌な予感だけしかしない。
「まさか、またっ!?」
あたしは「翔也のばかぁっ!」て叫びながらバスルームに駆け込んだ。