Dance in the rain

「苦手なら苦手って、言えばいいのに」
両手に紙コップ入りのコーラを持って、あたしはぼやいた。

視線の先には、ベンチに長い両手足を投げ出して(ほぼ)死んでる翔也。
遊園地に行きたいって言ったら、ほんの少しためらったみたいに見えたのは、そういう理由だったんだ。

でも……

翔也の新しい一面を見つけて。
あたしの心は、ほんのちょっとだけ弾んでる。
ごめんね、翔也。


——ねえねえ、あの人、かっこいいよ。
——ほんとだ、誰と来てるんだろ。彼女と?

かすかに聞こえた声に、ぎくっと足が止まった。
女の子たちのグループがいくつか、遠巻きに翔也を見ながらこそこそ話してる。

——わたし、どこかで見たことあるかも、あの人。
——ええっどこで!? あんなイケメン、一度見たら忘れないでしょ!
——ええっとどこだったかなあ。


確かに……イケメンだもんね。
モデルだし……見たことあったって、おかしくない。

ひそかに注目をあびてるベンチに近づくことができなくて。

ど、どうしよう……。
あたしが立ちすくんでいると。
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