Dance in the rain
「よかったな」
肩を抱き寄せられて、あたしは翔也の胸に、濡れた頬を押し付けた。
「……っく……」
どうしてだろう。
翔也は全部、わかってくれてるような気がした。
あたしの涙と笑顔の理由を、全部。
積み上がった真夏の雲の峰を2人で眺めながら。
あたしはこんな時間がずっと続けばいいって、思っていた。
◇◇◇◇
翔也がおごってくれるっていうから、夕食は焼肉食べ放題のお店に行って。
散々食べて飲んで。
真夜中近く。
あたしたちはようやく、アパートに帰ってきた。
「う。もう……動けない。翔也、おんぶして」
「アホか。ブタ猫なんて背負ったら、こっちが腰痛でぶっ倒れる」
「ブタじゃないもん!」
「はいはい、ブタ猫だろ」
「そうそう……って、違うわぃっっ!」
ぎゃいぎゃい言い合いながら玄関ドアを開けて。
「翔也……っ」
あたしは翔也にしがみついた。
廊下の向こう、リビングに電気が、ついてたから。
まさか……泥棒!?