Dance in the rain

ねえ翔也、その人は、誰?
あの夜聞いた「ジュン」て、やっぱり彼女なの?

あたしを遠ざけて、一体何の話をしてるの?
あたしが聞いちゃいけない話?
そうなの?

ぐるぐる、ぐるぐる。
頭の中が迷路みたいだ。
出口のない疑問ばかりが頭の中にあふれて。いてもたってもいられなくなって。
そっと、再び廊下に滑り出た。
翔也に指摘された歩き方が、こんなところで役立つなんて思わなかったけど。

リビングに続くドアを、こっそり細く開けた。

「そろそろ、いい返事を聞かせてもらいたいんだけど」

ソファに足を組んで座る潤子さんが、
壁にもたれた翔也を、じっと見上げていた。

美男美女、本当に絵になる2人で。
あたしは、目をそらしたくなるのを必死でこらえた。

「先方にも、ずいぶん待ってもらってるのよ」
「返事は変わりませんよ。何度言われても」
淡々と、翔也が言う。
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