Dance in the rain

「出発の前日、オレの、モデルとしての最後の仕事が入ってる。ヴィヴィ・ランってアメリカのアパレルメーカーが、アジア向けに作った新ブランドの、お披露目のファッションショー。昔世話になった人が立ち上げチームに入ってて、その縁で、デザインにも少しだけ関わらせてもらってる」

そっか。
あたしは頷いた。

やっぱり、もう歩き出してるんだね。
うれしいような、寂しいような。少し複雑な気持ちで聞き入るあたしに視線を合わせると、翔也は迷いのない口調で続けた。
「そのショーのオープニングアクトを、お前に頼みたい」

「……は?」

お、オープンニングアクト?

そんな台詞は、まったく予想してなくて。
しばらく返事するのも忘れていた。


パチパチ……何度も瞬きする。

「えっと、……それ、何?」

「ショーの前に、ステージでブランドイメージを込めたダンスを披露することになってる。それを、お前に踊ってほしい」

「あたし、が?」
「お前が」
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