Dance in the rain
15. ブラックスコール
「ここかぁ」
翔也からラインに届いた住所を確認しながら、<高瀬ダンススタジオ>と書かれたプレートを見上げた。
今、あたしは初台にいる。
新宿からたった1駅とは思えないほど静かな住宅街の一角、レンガ造りのかわいいビルの2階に、そのスタジオはあった。
ここに、今回のステージの振り付けを担当する、高瀬久美さん、という方がいて、本番まで毎日、あたしに指導してくれるそうなんだけど。
一体どんなダンスを踊ることになるんだろう?
緊張しながらビルの階段を上っていく。
すりガラスのドア越しに中を覗くと、今の時間レッスンはないらしく、シンとしてる。あたしは、おっかなびっくりドアを押し開けた。
「あの……こんにちは」
広いスタジオに人の気配はなくて。
あたしは靴を脱いで、そっと中に進んでみた。
磨き上げられたミルクティー色のフローリング。
使い込まれた頑丈なバー。
ダンサーたちの足音が、息遣いが聞こえる、懐かしい空間。
帰ってきたんだ——
ごく自然にこみあげてきた安堵感に、驚いた。
そして、気づいた。
そっか……
あたしは、帰ってきたかったんだ。
ずっとここに、帰ってきたかったんだ。
翔也からラインに届いた住所を確認しながら、<高瀬ダンススタジオ>と書かれたプレートを見上げた。
今、あたしは初台にいる。
新宿からたった1駅とは思えないほど静かな住宅街の一角、レンガ造りのかわいいビルの2階に、そのスタジオはあった。
ここに、今回のステージの振り付けを担当する、高瀬久美さん、という方がいて、本番まで毎日、あたしに指導してくれるそうなんだけど。
一体どんなダンスを踊ることになるんだろう?
緊張しながらビルの階段を上っていく。
すりガラスのドア越しに中を覗くと、今の時間レッスンはないらしく、シンとしてる。あたしは、おっかなびっくりドアを押し開けた。
「あの……こんにちは」
広いスタジオに人の気配はなくて。
あたしは靴を脱いで、そっと中に進んでみた。
磨き上げられたミルクティー色のフローリング。
使い込まれた頑丈なバー。
ダンサーたちの足音が、息遣いが聞こえる、懐かしい空間。
帰ってきたんだ——
ごく自然にこみあげてきた安堵感に、驚いた。
そして、気づいた。
そっか……
あたしは、帰ってきたかったんだ。
ずっとここに、帰ってきたかったんだ。