Dance in the rain

あたしの中の踊る、っていう意識が広がり、
外へ、外へ、開いていく。
それは、久しぶりに味わう感覚だった。

◇◇◇◇
「マスター、おかわりしてもいいですかっ!?」

空っぽになったお茶碗を抱えて、叫ぶ。
笑いながら「いくらでもどうぞ」って頷くマスターを見てから、
あたしはご飯をもりもりよそった。

「こっちも余ってるから、食べるかい?」
春巻きのお皿も勧められて。
ハートマークつきで「わお、ありがとうございますっ」ってお礼を言って、あたしは遠慮なく箸を伸ばした。

最近、あたしの食べる量はハンパない。
男性と同じか、それ以上をぺろっと食べる。
それもこれも、翔也が「1グラムの増減も許さない」とか言うせいだ。

練習でかなりエネルギーを消耗する分、しっかり補充しておかないと。
『猫に体重管理なんていう高等技術を求めたオレが間違ってた』
とかなんとか、バカにされかねない。

すると、あたしの食べっぷりを楽しそうに見ていた純さんが、「安心した」って微笑んだ。

「……え?」
「ショーのオープニングに一人で踊るなんて、プレッシャーすごいんじゃないかなってちょっと心配だったんだけど、全然大丈夫そうだね」

「あ……あは、えっと。そうですね。はいっ!」
あたしは笑顔で頷いた。
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