Dance in the rain

どうして?
どうして、ここにいるの?
ショーは? 準備は?
聞きたいことがぐるぐる渦を巻くけど、口の中はカラカラで。
音が出てこない。

あたしはギュッて、目を閉じて。声を振り絞った。
「ご、ごめんね……翔也。迷惑かけて」

「当たり前だ。どんだけの金が動いてるイベントだと思ってるんだ? 賠償金、お前払えるのかよ?」

ば、ばいしょうきん……

「う……それは……」
言葉を失うあたしの耳に、「ばぁか、冗談だ」って、呆れたような声が聞こえた。
「スタッフには、ちょっと腹壊してトイレにこもってるって言っといたから」

「え……?」

「まだ間に合う」

「行くぞ」って立ちあがると、あたしの腕を引いた。

行きたいよ。あたしだって、行きたい。でもっ!

足を踏ん張って、その腕を思いっきり振り払う。
「行けないっ! 絶対無理!」
あたしは叫んだ。
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