Dance in the rain
翔也は腰に手を当てると、はぁって息を吐いた。
「あのなあ、お前はただのオープニングアクトのダンサーだろ。客が見に来るのは新ブランドの洋服で、ダンスじゃない。お前のステージは、単なるオプションなんだよ。うぬぼれんな」
「わ、わかってるけど……でも……っ」
無理だよ。あたしは……っ
あの子の前で踊るなんて……
こみあげる涙をこらえて、ふるふる、ふるふる、首を振る。
壊れた人形みたいに。
「花梨」
翔也の手が、あたしの体を引き寄せて。
ふわってなだめるように優しく、抱きしめた。
「しょう、や……」
とくん。とくん。
翔也の、あたしの。心臓の音が混ざり合う。
耳元の空気が揺れて。密やかな声が、忍び込む。
「お前は、どうして踊るんだ?」