Dance in the rain

着替えを終えて降りていくと、
ロビーの一部を封鎖して雨天用の会場設営が急ピッチで進んでいて、駆けずり回るスタッフさんで、てんやわんやの大混乱だった。

あたしはどこでスタンバイすればいいんだろう?

誰かに確認しなきゃ、と思うんだけど、みんな殺気立って走っていて、
とても話しかけられる雰囲気じゃない。

ロビーを歩きながら、どうしようかと迷っていると。
「中止ってどういうことですか!?」

あ……翔也の声だ!

声を頼りに機材の間を縫って歩いていく。
窓を背にしたプロデューサーさんを囲むようにして、久美さんと翔也が
立っていた。
その表情はかなり険しくて、あたしは不安になる。

「俺だって残念なんだけどね、まさか、いきなり雨バージョンに変更になるとは想定してなくて、こっちもドタバタで、まいっちゃってるんだよ」

「時間を後ろ倒しにすればいいだけでしょう? 何もオープニングアクトだけカットすることないじゃないの」
久美さんの言葉に、あたしは「え」って足を止めた。

背筋が、ひんやり冷える。
オープニングアクトを、カット?
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