Dance in the rain
「ただ、勝手に踊らせていただくだけでいいんです。お願いします」
あたしは、翔也の隣に立って頭をさげた。
「しかし……万一事故でも起こったら……」
弱り切った表情で、プロデューサーさんが胡麻塩頭を撫でまわした時。
「おもしろいんじゃないですか」
淀みを吹き飛ばすみたいな、迷いのない声。
新条さんだった。
「どうせ会場設営まではまだ時間がかかりますし。その間、この窓から彼女のダンスを見てもらうことに何の問題があります? 音楽は、ホテル側に協力してもらってロビーで流せばいい」
「うーん……新条さんがそうおっしゃるなら……しかし、ヴィヴィ・ラン側は承知しますかね?」
「それを説得するのが、私の仕事ですよ」
新条さんはあたしを見ると、「大丈夫、必ず説得しますから」って、頷いてくれた。
「はいっよろしくお願いします!」
それから30分後、ヴィヴィ・ランのOKが伝えられた。
ホテルのスタッフさんも協力してくれて、窓側にあったコンシェルジュスペース等、障害となるものはすべて取り去ってくれた。
あたしは、踊れる。
やっと、踊れるんだ——