Dance in the rain

「なんでも……?」
その誘うような響きに捕らわれて、あたしの視線が泳いだ。

行かないで。
って、言いたかった。
パリになんか、行かないで。
ずっと、一緒に……ずっと。

ぐっと、言葉を飲み込んだ。

わかるから。
あたしが踊りたいって思うのと同じくらい強く、
今何よりも、彼がデザインしたいって思ってるってこと。
何かを生み出したいって思ってるってこと。
わかるから。

それなら、せめて……。

あたしは、覚悟を決めた。

朝には、いってらっしゃいって言うから。
笑って言うって、誓うから。
だから今夜だけ。
たった、一度だけ——


「……抱い、て」

震えながら、どもりながら、零した言葉に。
翔也の目が、驚いたように開いた。
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