Dance in the rain
「……へえ、今日はやけに素直なんだな」
「す、素直じゃ、いけない?」
「いけなくないけど……」
口をつぐんで、そしてくくくって笑いを殺す。
わ、笑われたっ!
どっと恥ずかしさに襲われて、頬を押さえた。
やっぱりこんなこと、言わなきゃよか——
「違う違う、悪ぃ、お前に対して笑ったわけじゃねえから」
え?
「自分に対して」
「じ、自分?」
おうむ返しに聞くと、翔也は「数分前まで、散々脳内シミュレーションしてたから」って、どこか照れたように、居心地悪げに言う。
「のーないシミュレーション?」
「どうやって口説き落として、これ、ドアにかけさせようかって」
翔也の手がのびて。
ノブにかかっていたドアサインをつまみ上げた。
それは——Don’t Disturb——邪魔しないで——
「しょう……や……」
こくん、て喉が小さく音を立てた。