Dance in the rain
4. 疾風雲
「オムライスセットですね。少々お待ちください」

テーブルにお冷とおしぼりを置きながら、あたしはお客に笑顔を向けた。


“雨音”で働き始めて、あっという間に2週間。
メニューも頭に入ってきたし、スタバとは違うエスプレッソマシンにも慣れてきたし。
これならなんとか続けられそう。
って、ちょっとホッとしてるところ。

「すみませーん」

声の方を振り返り、「今伺います」って叫んだ。

オーダーストップも間近な19時を過ぎても、
店内はお客さんでかなり埋まってる。そのほとんどが女性だ。

マスターこだわりのコーヒーや料理、純さんお手製のスイーツが評価されてる、っていうのももちろんだけど。
やっぱり一番の理由は……

「ねえ、あなたほんっとに純様の彼女じゃないのよね?」
「はいっ、ほんとにほんとに、違います!」
オーダーそっちのけですごんでくるお客に、こくこく、何度も頷く。
そして、脳内‘仁科兄弟総選挙’の純さん欄に1票を追加した。

やっぱり純さん押し、強し。
< 48 / 264 >

この作品をシェア

pagetop