Dance in the rain
5. 戸惑いのモンスーン
リビングの窓を開けると、網戸越し、昼間の熱気よりは幾分ましな風が室内に入ってきて、シャワーの後の火照った体を冷やしてくれた。
夜空は、赤みを帯びた雲に覆われてる。
雨が……近いのかも。
窓は閉めて寝た方がいいな。
そんなことを考えながら。
並んだCDの中からクイーンを選んで、再生ボタンを押して。
ソファにダイブした。
夜、リビングでこうやって音楽を聴くのが、最近のマイブームなんだ。
翔也には、猫がソファに丸まってる、とか言われるけど……。
『今夜は翔也、来なかったね』
さっきお店を出た時純さんに言われた言葉が、脳裏にひらめいた。
毎日といっていいほど、翔也は頻繁に“雨音”に寄るけど、今夜みたいに来ない日もあって——
思わず、ふうぅって息をはく。
あたし、ほんとに翔也のこと、何も知らないんだよね。
知ってるのは、この部屋と“雨音”にくる翔也だけ。