Dance in the rain
足の長さが絶対的に違うせいか、彼の進みは思いがけず速くて、人ごみをすり抜けてどんどん先へ行く。
もう少し、もう少し……
「拓巳さ……っ」
足が、ピタって止まった。
交差点に立っていた女性が、彼に手を振っていた。
ちっちゃな顔に、くるっと丸い、大きな瞳。
ゆるいハーフアップヘアがものすごく色っぽくて、似合ってて。
きれいな、人だった。
そして、シフォンっぽい柔らかそうな白ワンピに包まれた、彼女のお腹は……膨らんでいた。
愛おし気にそのお腹に手をあてて、彼が何かを女性にささやいてる。
女性はおかしそうに笑いながら、彼を見上げて、その手に自分の手を重ねた。
彼女へ、彼女のお腹へ。
彼が注ぐ眼差しはどこまでも甘くて、優しくて。
あたしの心は、パリパリって。砕けた。
薄っぺらい氷みたいに、軽い音を立てながら。